コラム - 京食の達人

2013年7月4日
vol.14「今もこれからも愛され続けつ昆布とおだし」 株式会社いつつじ 代表取締役専務 久世章斗さん

 日本の食には欠かせない『昆布』。
 また,京都の食文化を支えてきたのも美味な「だし」があったから。
 今,先祖代々受け継いできた昆布の良さを見つめ直し,後世に伝えようと
様々な方が取組まれています。
 その中のお一人,「五辻(いつつじ)の昆布」の代表取締役専務 久世章斗さん
にお話しを伺いました。


〇「五辻(いつ
つじ)の昆布」さんの歴史を教えてください。
 
 創業は明治35年で,今年で111年目を迎えます。
 五辻通りにお店を開いたのは,私の祖父(3代目)であり,それ以来
地元の方々から「五(いつ)辻(つじ)の昆布屋さん」と親しまれています。


〇商品へのこだわりを教えてください。
 
  当店では真昆布と羅臼(らうす)昆布を主に取り扱っています。昆布は
寝かせる方がうま味が増すため,最低でも1~2年寝かせることを代々
守っています。
採れたばかりの昆布は粘り気はありますが香りはあまりしません。
年月が経つにつれて,粘りや磯臭さがなくなり,うま味や香りが増します。
 
 自社の倉庫で約温度20℃,湿度60%に管理して寝かせています。
その後,例えば職人の手削りによって真昆布からとろろ昆布を作ったり,
自社の窯で炊いて塩昆布なども作っています。


〇管理が大変ではありませんか?
  
   昆布自体はかびることもあるものですが,しっかり管理していれば大丈
夫です。
 父がよく言っていたのは,昆布は〝からからの状態〞ではおいしくなく,
ある程度水分を含んだ状態が美味しい。梅雨の間に一度水分が中に入り
梅雨が明けて外に水分が出てくるとうま味も外に出てくる(表面についてい
る白い粉)と言っていました。
 祖父は,人間と同じで若いうちは粘りがあるが,歳を重ねると味が出てく
るという風に例えていました。
   店頭でお客様に採れたての昆布と寝かせた昆布の香りや味を比べても
らうと,寝かせた方がおいしいと言われます。


〇おいしいだしの味は昆布が決め手!
 昆布からおいしいだしをひくためには,鍋の水の温度を60℃で保たせて
40分~50分つけておくと言われます。
 しかし,まず水を沸騰させてから火を切り,昆布を入れて何分後に上げる
と決めているお店もあります。
 だしのひき方はお店によって色々ですが,グルタミン酸とイノシン酸の割合
は昆布のグルタミン酸がしっかり出ていないとイノシン酸が活きません。
だしのベースは昆布であり,昆布が良いものでないと,いいだしがとれません。


〇昆布のおいしさやだしの文化をどのように伝えようとお考えですか?

 昆布からひいただしは,体にもいいものですし,嫌な甘みもなく,昆布自体の
すっと消える独特の後味があり,使えばおいしさが分かってもらえるはずです。

 しかし,今は,一方的に「昔からこうしていたのだからだしを取ってください」と
言っても伝わりません。
例えば昆布を形に切り取り、「付けておくだけでだしが出ますよ」と言うと,かわ
いいし面白そうだからやってみようという気持ちになっていただけます。そういう
感覚でまず,だしに触れてもらうことを考えています。
 また,目上の方や大切な方にお料理をふるまう時は昆布からだしをひこうと
思っていただけるよう,ちゃんとだしをひいた料理とそうではない料理の味の違
いを理解していてほしいと思います。 

 また,当店では対面販売を大切にしており,お客様の声をすぐ商品につなげ
る努力をしています。「ちょっとずついろんな昆布が食べたい」という声から多種
類をパッケージした商品を作ったり,元々味には自信があったハート昆布をブラ
イダル等に使ってもらうために,女性に喜ばれそうな包装にしたりとその時々で
商品を考えています。

    ブライダルにも使われるハート昆布♥
〇素敵な包装がたくさんありますがどなたが作られたのですか?

 祖父が絵が好きだったこともあり,絵描きさんに依頼した包装紙をずっと使っ
ています。当時京都の絵柄に統一していただいた包装紙が,今でも評判が良
く,絵で商品を選ばれるお客様もいらっしゃいます。


〇最後に一言お願いします。

 昆布が今までなくならずに残っているのは日本の食生活に必要とされている
からだと思います。
 昆布からだしをひいて作る料理のおいしさや文化を伝えられるのは昆布専門
店だからこそです。
 これからも良いものを作り続けて昆布の良さをお客様に伝えていきたいと思い
ます。

 

 

今回の達人

vol.14「今もこれからも愛され続けつ昆布とおだし」 株式会社いつつじ 代表取締役専務 久世章斗さん

(株)いつつじ   代表取締役専務 久世章斗さん

京食の達人

このコラムについて
京都にゆかりの「食の専門家」や「食にまつわる職人さん」からの発信です。
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